加齢や病後、産後など様々なことをきっかけに起こる尿漏れ。
その不快感や気になる臭いなどに周りに相談できず人知れず悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
この記事では気になる尿漏れについて日本泌尿器科学会専門医である聖隷浜松病院の泌尿器科の医師が詳しくご紹介します。
尿漏れとは、自分の意志に反して尿が漏れ出てしまう症状を言います。
俗にいう尿失禁で、尿を出すための筋力である括約筋が弱ったことによる排尿後尿滴下や、くしゃみや運動などでお腹に力が入った時に尿が出てしまう腹圧性尿失禁など種類も様々です。
尿のトラブルとしては他には頻尿と残尿があります。
頻尿は1日に8回以上トイレで排尿することを言い、残尿は排尿後膀胱に残っている尿の量を言い50ml以上の症状を指します。
尿漏れは頻尿や残尿は併発することもあります。
加齢や妊娠、出産が原因のものは骨盤底筋を鍛えることで改善することもありますが、放置すると腎不全などの怖い病気につながることもあるので注意が必要です。
女性は妊娠や出産によって骨盤底筋力が弱ったことによって起こる尿漏れが多いです。
骨盤底筋とは骨盤の底にある筋肉で子宮や膀胱や直腸などの内部の臓器を支えている筋肉です。
この筋力が弱ると骨盤がゆがんだり、尿道がグラグラしたり、尿道を閉じる力が弱くなります。
そうなるとくしゃみや笑ったりといった動作でお腹に力が入った時に腹圧が上昇して起こる腹圧性尿失禁になります。
中高年の女性の6割は骨盤底筋力が弱ったことによる腹圧性尿失禁です。
頻度はその人の骨盤底筋の筋力によって個人差があり、頻度も激しい運動をした時のみ漏れる人から椅子から立っただけで漏れ出る人まで様々です。
ただ尿の量は非常に少なく下着を濡らす程度で、頻尿もなく、おねしょもないのが特徴です。
一方で男性は加齢にともなっておきる前立腺肥大症による尿漏れが大半をしめます。
前立腺肥大症は男性の加齢と共に起こる症状で前立腺の良性過形成によって起きます。
初期の症状は尿道や膀胱が刺激されることによって頻尿が症状として現れます。
その後膀胱に尿が溜まっていないのにすぐにトイレに行きたくなる過活動膀胱の状態になります。
尿の勢いが弱くなるため、残尿貯留の状態になり、トイレでおしっこをした直後なのにちょろっと尿が漏れてしまう排尿後尿滴下の状態になります。
さらに前立腺肥大症がすすみ残尿の症状が悪化すると尿道が狭くて自力でおしっこを出すことが難しくなり最悪の場合溢流性尿失禁という尿が常に漏れ出る状態になり、そうなると腎臓に悪影響が出るため、注意が必要です。
前立腺肥大症は加齢とともに起きる症状ですが必ずしも男性全員がなるわけではなく、40~50歳で2%、60歳代で6%、70歳代で12%に発症します。
人種差もあり、東洋人の方が白人より多く、黒人が一番少ないという特徴があります。
また生活習慣には起因せず、尿道括約筋という尿漏れを防ぐための筋肉の発達度合いによって発症の度合いが変わりますが、前立腺肥大を予防する方法はありません。
30代では女性は妊娠、出産によって骨盤底筋が弱ったことにより尿漏れが起きます。
これは時間経過と共に改善することがほとんどのため、骨盤底筋トレーニングをして自宅で様子をみるのがベストです。
40代になると男女ともに過活動膀胱に伴う切迫性尿失禁が増えていきます。
尿意を感じてからトイレに行くまでに間に合わず尿が出てしまう症状です。
これはなるべく膀胱に尿を貯める膀胱訓練をすることにより改善します。
またこちらも骨盤底筋トレーニングをすることで、予防することができます。
骨盤底筋トレーニングは仰向けに寝て、足を肩幅に開き、陰部を身体の中に引き込むように引き締めながら5秒間息をゆっくり吸い込みながら行うトレーニングです。
この動きを1日10セットを目安に行いましょう。
骨盤底筋を鍛えておくと尿漏れの改善だけでなく、インナーマッスルが引き上げられてぽっこりお腹や腰痛、生理痛、便秘の改善などの嬉しい効果があります。
50代は男性では前立腺肥大症の有病率が上昇します。
前立腺癌にかかる方も増えてくるため、前立腺癌の検診(PSA測定)を定期的に受診するようにしておくと安心です。
60代以降は女性はフレイル、サルコペニアによる腹圧性尿失禁が増加します。
臭いが気になる場合はパット等を下着にあて細めに変えると安心です。
尿漏れや残尿感を放置しておくと膀胱に残っている尿が炎症を起こし膀胱炎や、腎不全等の原因になることもあります。
症状が気になる場合は最寄りの泌尿器科に相談するのがおすすめです。
聖隷浜松病院・泌尿器科医師
【保有資格】
日本泌尿器科学会専門医
身体障害者福祉法第15条指定医
Robotic Observation program For Urology Surgery修了(da Vinci)
Certificate of da Vinci System Training As a First Assistant
Certificate of da Vinci System Training As a Console Surgeon
がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了