尿漏れ・ちょい漏れという尿のお悩みは、歳を取るにしたがって誰もが必ず経験する症状と言っても過言ではありません。
日常生活の中で加齢とともに尿漏れの頻度があがりますが、誰にも相談できずにひとりで悩んでいる人は少なくないでしょう。
しかし、原因や対処法を知っていれば悩みも改善されます。
この記事では男性の尿漏れ、ちょい漏れの原因や対策など、おさえておきたい基礎知識をご紹介します。
男性の尿漏れ・ちょい漏れの多くは「前立腺肥大症」と「過活動膀胱」の2つが原因です。この2つを併発していることもあります。
これらは加齢とともに起こる症状です。
中年期になるとまずはじめに、前立腺が徐々に大きくなります。これが「前立腺肥大症」の状態です。
前立腺肥大症そのものは、加齢に伴う自然な変化です。
しかし、前立腺が肥大したことにより膀胱や尿道を圧迫するようになると、尿の回数が増えてしまうのです。
また、前立腺肥大症により尿が出にくくなり、をそこで尿を出そうとがんばりすぎると筋肉が傷んでしまいます。
その現象が続くと、膀胱と脳の連携がうまくいかなくなり、結果として「過活動膀胱」になることがあります。
「過活動膀胱」とは、本来なら尿意を感じない程度しか尿が溜まっていないのに、膀胱が勝手に収縮してトイレが近くなる病気です。
このように「前立腺肥大症」が「過活動膀胱」を引き起こすため、尿漏れやちょい漏れを治療するためにはまず「前立腺肥大症」の治療を行うことが効果的です。
前立腺肥大症、過活動膀胱の治療には薬物療法と行動療法があります。
医師の診断を受ければ症状に合った薬が処方されますが、排尿に関しては生活習慣も大きく関係するため行動療法も行われます。
前立腺肥大症の症状を改善するためには血行を良くすることが大切です。
長時間の座位を避け、適度な運動をして血行の改善をはかります。
また膀胱にためられる尿の量を増やし、尿の回数を減らしていけるように膀胱訓練を行います。
膀胱を支える骨盤底筋を鍛える「骨盤底筋体操」も効果的です。
膀胱が過剰な収縮をしないよう注意する必要があります。
また、過活動膀胱は過度な水分摂取やコーヒー・紅茶などのカフェインの取りすぎにも注意することで、症状を改善することができます。
尿を出し切ったはずなのにちょろちょろと出てきてしまうちょい漏れの現象は「排尿後尿滴下」と言います。
量は1cc~5ccとわずかなものですが、下着が濡れる不快感がありや、時間が経つと臭いも気になります。
50代以上の男性の4割弱の人にがこの症状の経験があると言われています。
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代表的な尿漏れには4種類がありますが、男性に多いもの、女性に多いものがあり、また原因も異なります。
その4つの尿漏れについてご紹介します。
男性では前立腺肥大症、女性では子宮癌・直腸癌の術後に見られる尿漏れです。
それらが原因となり、膀胱が小さく固まったことで、ぎゅっと収縮することができず、膀胱に常に尿が残った状態になります。
その尿が溜まっていくると膀胱から尿があふれだし、尿漏れにつながるのです。
トイレではすっきり出し切ることができず出ないのに、常に尿が少しずつ出る状態になるているため生活に支障がでます。
放置すると腎臓に負担がかかり、腎不全のリスクが出てくるため早めの対処が必要です。
圧倒的に女性に多い尿漏れです。
重いものを持った時やくしゃみをした時、運動をした時に起こる尿漏れで、ひどい場合だと椅子から立っただけで漏れてしまうこともあります。
中高年の女性の6割の尿漏れはこれが原因です。
量は人によってさまざまですが、だいたい大体は少なく下着を濡らす程度です。
頻尿もなく、おねしょをすることもありません。
原因としては、加齢に伴うもの、また出産で伸びてしまった骨盤底筋が戻らなくなり、弱くなることなどがあります。
あまり尿がたまっていないのに、膀胱が勝手に頻繁に収縮することで起こります。
量は100cc程度とそこまで多くはありませんが、急におしっこをしたくなり、我慢できず漏らしてしまうため、日常生活に支障がでます。
原因は過活動膀胱、前立腺肥大症に加えて膀胱癌やパーキンソン病、脳血管障害、膀胱炎などのこともあるので注意が必要です。
認知力の低下や、手足の運動機能の低下によって起こるのが機能性尿失禁です。
膀胱や尿道の働きは正常ですが、認知力の低下により、トイレの位置がわからない、手足がうまく機能しない、排尿の姿勢がとれない、トイレに行くのに時間がかかるといった理由で尿を漏らしてしまいます。
多くは認知症の高齢の方に見られる失禁です。
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1日に何度おしっこのためにトイレに行きますか?
「頻尿」とよく耳にしますが、1日に何度以上トイレに行けば「頻尿」となるのでしょうか。
健康な人の場合、1日の排尿の回数は、起きてから寝るまでの日中は5~7回、夜、就寝している夜間は0~1回が一般的です。
寝ているときにトイレのため起きるのは億劫なものですが、一晩に1回ぐらいならば問題がないということです。
では、「頻尿」の場合はどうでしょうか。
日本泌尿器科学会では、朝起きてから就寝までの間の排尿回数が8回以上の場合を「頻尿」と言っています。ただ、8回以上でも病気がなく生活に支障がなければ問題ありません。
頻尿の原因としては、過活動膀胱、膀胱炎、前立腺肥大症などのほか、心因的なもののことがあります。
尿の回数が平均より少ない場合にも、心配しなくていいものと、病気を疑ったほうがいいものがあります。
腎臓病や尿道結石があると、尿の回数や量が減ることがあるので注意が必要です。
トイレの回数が頻繁な原因として、「過活動膀胱」「残尿(排尿後、膀胱に尿が残ること)」「多尿」「尿路感染・炎症」「腫瘍」「心因性」に分けることができます。
男性の場合、過活動膀胱は前立腺肥大症が引き起こしていることが多くあります。残尿も前立腺肥大症が進行すると起こる場合が多いです。
多尿は、水分の摂取飲料が多かったという理由以外、病気が理由と考える場合には、糖尿病や慢性腎不全で多尿になることがあります。
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尿の色も健康状態を判断する重要なバロメーターとなります。
体の異常がなくとも、生活習慣や口にしたものによって、尿の色は変化します。
しかし、病気などによって尿の色が変化することもあります。
心配のいらない尿の色と、病院に行ったほうがいい尿の色はどのように判断すればいいのでしょうか。
健康なときの尿の色は麦わら色、薄い黄色っぽい色です。
では、尿の色が普段より濃いときにはどのような原因があるのでしょうか。
病気などの異常がなくても尿の色が濃くなってしまうことがあります。
主な原因は、体の水分が失われて脱水状態になっていたり、ビタミン系サプリメントを飲んだりした場合です。
しかし、そのような心当たりがないときには、肝臓病や胆道の障害が隠れていることがあります。
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尿の色が黄色というよりは茶色いように感じたときはどうでしょうか。
大量に汗をかいたあとや、激しい運動をしたときに尿が凝縮されて茶色くなることがありますが、これは生理現象なので問題ありません。
ただ、急性腎不全や溶血性貧血などの病気が原因となっていることもあります。
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では、尿の色がいつもより薄く、透明に見えるときは問題ないのでしょうか。
水分をたくさんとったときは尿の色も薄くなるので、このようなときは心配いりません。
しかし、頻繁に喉が渇いて水分をとったために尿の色が薄くなる場合は、糖尿病の可能性があります。
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尿はアンモニア臭がする臭いものというイメージがありますが、通常は排尿直後の尿にはほとんど臭いがありません。
尿をそのまま放置しておくと、空気中の雑菌のために臭いが強くなるのです。
尿から甘い臭いがする場合は、糖尿病の可能性があります。
尿の臭いだけで糖尿病だと判定することはできませんが、口の渇きや尿の回数や量が増えた、夜間尿や全身倦怠感があるようならば受診して検査を受けましょう。
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また、自分の汗や体から尿のようなアンモニア臭がすることがあります。
ストレスによって起こることが多いので「疲労臭」と呼ばれています。
これは、体内で発生したアンモニアが分解しきれずに尿以外の方法で排出されるために起こります。
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気になる尿漏れ、ちょい漏れですが、自宅で簡単にできるトレーニングによって症状を劇的に改善することができます。
まず男性に多いちょい漏れ「排尿後滴下」には2つの対策があります。
1つ目は「尿道ミルキング」という方法です。
排尿をした後に陰嚢の裏から先端までを牛の乳をしぼるようにして尿をしぼりとる方法です。
物理的に圧を加えて尿を出すことで、ちょい漏れは劇的に改善するので試してみてください。
2つ目は「骨盤底筋体操」という方法です。
別名ケーゲル体操とい言われるこの方法は男性のちょい漏れや尿漏れ、また女性に多い「腹圧性尿失禁」に特に効果があります。
やり方は、まず始めに、仰向けに寝てひざを立てて手を肩幅ぐらいに開きます。
次に息を吐きながらゆっくりとおしりをあげて肩、胸、膝が一直線になるところで3秒間停止します。
内ももに力を入れて行うと効果的です。
その後にゆっくりと息を吐きながらおしりを落として元の姿勢に戻ります。
骨盤底筋を鍛えることにより、尿漏れの改善だけでなく、腰痛や便秘を改善したり、インナーマッスルが鍛えられてぽっこりお腹が引き締まったりという嬉しい効果があります。
また女性にとっては、産前に行うとは出産を軽くし、産後は骨盤の歪みの改善に繋がるなどのメリットがたくさんあります。
ぜひ日常生活に取り入れてみてください。
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