健康診断を受けると最初に必ず尿検査があります。そのことからもわかるように、尿は健康状態を示す重要なバロメーターです。
健康診断のようにわざわざ時間を取って専門的な診断を受けなくても、毎日の尿を観察するだけで手軽に体の状態を確認することができます。
赤や茶色など、尿に色がついているより、尿の色が透明なのは、クリーンで不純物が含まれていないという印象を受け、何か体に異常があるとは思わないのではないでしょうか。
しかし、イメージとは逆に、尿の色が透明なことが病気のサインである場合があります。
一見異常には見えないからこそ、透明な尿には注意が必要です。
ここでは、尿の色が透明な場合にどのようなことが考えられるのかについてご紹介します。
まず考えられる原因は、水分をたくさんとったことです。
毎日の尿には、そのときの水分の取り方や食事の内容が そのままダイレクトに現れます。
口から取った水分は、胃や腸を通って血液となります。そして、最終的には腎臓で濾過され、老廃物が余分な水分とともに尿として排出されます。
このように、水分をたくさんとると、尿の量が増えるのですが、それとともに尿の濃度が薄まり、尿の色も薄くなるのです。
夏は水分をとっても汗としても排出されますが、それほど暑くない季節には 汗をかかないため、水分は尿として排出されることになります。
水分をたくさんとったときに尿の色が薄くなるのは、自然なことですので心配する必要はありません。
しかし、水分をとりすぎたわけでもないのに尿の色が薄かったり透明になる場合には、病気の可能性も考えられます。
尿が透明になる病気としては糖尿病があります。
「糖尿病」という名前にも表れているように、糖尿病になったときの尿の特徴としては甘い匂いがすることが知られています。
一方であまり知られていませんが、糖尿病になった時の尿の状態として、色が薄くなったり透明になったりすることもあるのです。
糖尿病になったときに尿が透明になるメカニズムは以下のようなものです。
糖尿病とは、血液中のブドウ糖の濃度を下げるインスリンというホルモンの働きが悪くなることによって起こる病気です。血液中のブドウ糖の濃度、すなわち血糖値が高くなると、血液はドロドロとした濃い状態になります。
このような血液の状態は、脳からは水分が足りない脱水状態であると判定されます。そして、そのよくない状態を改善して血液をサラサラにするために、脳から水を飲むようにという指示が出されます。
そのような指示が出ているので、糖尿病になると喉の渇きを頻繁に感じるようになり、水をたくさん飲むようになります。その結果尿の量が増え、尿の色も薄まって透明になるのです。
水をたくさん飲んだために尿が薄くなるというメカニズムそのものは、最初に述べたような健康な時に水を飲み過ぎて尿が透明になることと変わりません。
ただ、透明な尿が出ることに加えて、尿の臭いが甘くなった、尿の泡が消えない、体重が減少した、頻尿などの症状があるようであれば、糖尿病の可能性があるかもしれません。
糖尿病は放置しておくと重症化して、腎不全になったり神経症を発症したりしてしまう恐ろしい病気です。
トイレに行ったときに、このような気になる症状がある場合には、速やかに病院を受診することをお勧めします。
濃い色の尿に比べて、「透明な尿は健康である」と思われて見過ごされてしまいがちですが、実はそうではありません。
健康な尿の色は、透明ではなく、「淡黄色」か「むぎわら色」をしています。胆汁の色素や食べたものに含まれている色素が尿には溶け込んでいるのが普通なので、黄色っぽい色がつくのです。
加齢とともに糖の代謝異常を抱える人は増加していきます。日本国内では、予備軍の人も含めると実に1000万人以上の人が 糖尿病の可能性があるとも言われています。
生活習慣病である糖尿病は、早く発見して、食事療法などで適切に対処すれば病気の進行を抑えることができます。
そして、糖尿病を早期発見するためには、毎日の尿の状態を観察することが、手軽でありつつもとても大切なことなのです。
尿は、毎日手軽にチェックできる健康のバロメーターであることは間違いありません。
健康な尿と糖尿病になったときの尿の違いを知っていれば、それだけ早く糖尿病の兆しを発見することができます。
年をとるにつれて糖尿病のリスクは確実に増加していきます。
まだ自分は大丈夫と過信せず、トイレタイムに少しだけ時間を取って尿を観察し、もし気になることがあれば、自己診断をせず病院を受診するようにしましょう。