排尿トラブルの大きな原因のひとつに、過活動膀胱があります。
これは、加齢とともに増加する病気で、40歳以上の8人に1人が悩んでいるとも言われるポピュラーなものです。
「トイレが近くなって困った」と感じていても、その原因である過活動膀胱についできちんと知っている方は少ないのではないでしょうか。
ここでは、過活動膀胱の症状や原因、そして対処法についてご紹介します。
通常は、膀胱にある程度の尿がたまったあとに、脳から「尿を出せ」という指令が膀胱に出て、尿意を感じる、というメカニズムになっています。
そのため、トイレとトイレの間にはある程度の時間が空くのが普通です。また、尿意を感じても、いくらかはがまんすることができます。
「過活動膀胱」とは、本来なら尿意を感じない程度しか尿が溜まっていないのに、膀胱が勝手に収縮してトイレが近くなる病気です。
大きく分けて3つの症状があります。
[su_note note_color=”#f4fafd”]
・急に尿がしたくなって我慢ができなくなる(尿意切迫感)
・急におしっこがしたくなり、トイレまで我慢できずにもれてしまう(切迫性尿失禁)
・排尿の回数が増える(頻尿)[/su_note]
夜、寝ているときにも尿意を感じるのが特徴で、夜間も頻尿のため起きることが増えていきます。
過活動膀胱は、脳から膀胱に間違った指令が出ることによって起こる病気です。
そのため、過活動膀胱の原因は、神経に関するものとそうでないものの大きく2つに分けられます。
脳卒中、脊髄の損傷などを患って、神経に後遺症が残り、それが膀胱に影響すると過活動膀胱となってしまいます。尿を膀胱に十分ためておくことができなくなったり、尿を出す、止めるといったコントロールに支障が出たりします。
神経の病気でなくても、膀胱がうまく働かなくなってしまうことがあります。
膀胱や尿道などを骨盤の中で支えている筋肉の骨盤底筋が、加齢や肥満などのために弱くなって過活動膀胱になることがあります。骨盤底筋が弱くなると尿道がうまく絞められなくなり、ちょっとした刺激で尿が出てしまうのです。
特に女性は子どもを産むと骨盤底筋が弱くなるため、出産後に過活動膀胱に悩む人が多くなります。
男性の場合は、前立腺肥大症から過活動膀胱になってしまうことも。
加齢とともに過活動膀胱は増えますが、原因が特定できないものもあります。
過活動膀胱への対処法としては、自分でできるトレーニングと、病院で受ける治療とがあります。
「骨盤底筋体操」とは、膀胱を支える骨盤底筋を鍛える体操です。
深呼吸をしてリラックスして行いましょう。
[su_note note_color=”#f4fafd”]
1 テーブルなどのそばに立って手をつき、足を肩幅の広さに開き、軽く前に傾いた姿勢をとります。
2 そのままの姿勢で陰部を引き上げるように力を入れます。 やり方のコツは、男性は「肛門」、女性は「膣」を締めるイメージで行うことです。肩や足に力が入らないように注意してください。
3 力を入れたまま5秒間キープします。
4 その後50秒ほど力を抜いてリラックスします。[/su_note]
慣れてきたら、3の力を入れてキープする時間を10~20秒に増やしてみてください
2〜4を1回につき10セット行うことがめやすとなります。
骨盤底筋体操は、慣れてくると、寝転んだ姿勢、椅子に座ってなど、さまざまな状態で行うことができます。
生活の中のちょっとした隙間時間に取り組んでみましょう。
「膀胱訓練」とは、排尿を意識的に我慢して、尿を膀胱にためる量を増やしていき、トイレに行く間隔を広げていく訓練です。
少しでも尿意を感じるとトイレに行ってしまう人や、膀胱にためられる尿の量が少ない人に適しています。
尿意を感じてすぐにトイレに行くのではなく、5分間がまんします。その間は、別のことを考えたり、骨盤底筋を締めることを意識したりするとよいでしょう。
慣れるにつれて、がまんする時間を10分、15分というように増やしていきます。
ただ、過活動膀胱の原因によっては症状を悪化させることもあるので、注意しながら行いましょう。
病院で過活動膀胱の治療を受ける場合は、薬による治療が中心となります。
過活動膀胱の原因や、男性か女性かによって使われる薬が違うこともあるので、医師の指示に従いましょう。
そのほかに、電気刺激を使って症状の改善をはかる治療法もあります。
排尿トラブルのひとつである過活動膀胱は、トイレが近くなる困った症状ではありますが、日常生活に支障がないようであればそのまま生活を続けてもかまいません。
その場合は、自分でできるトレーニングである骨盤底筋体操や膀胱訓練を行って、尿をコントロールできるようにしていけばいいでしょう。
ただ、トイレが間に合わず漏らしてしまうことがある、トイレに行く頻度が高すぎて困る、というような場合は、病院を受診することをおすすめします。