尿漏れを初めて自覚したとき、私はまだ20代。ショックで思わず泣きました。
とある妊婦の“尿漏れ体験談”ですが、もしこの実体験が尿漏れに悩む同世代を励ますきっかけになればと思い、この場を借りてお話しさせていただきます。
2019年の春、第一子を妊娠しました。
つわりがきっかけで妊娠が判明したため、喜ぶ間もなく嘔吐と戦う毎日。水さえまともに摂取できず、体重が半月で8kg落ちたほど壮絶でした。
そして迎えた妊娠5か月目。俗に“安定期”と言われるだけあって、少しずつ元の生活を取り戻し、精神的にも穏やかになってきたそのときでした。
宅配便のチャイムが鳴ったため、ふくらみ始めたお腹を抱えて立ち上がった瞬間……おそらくそれが人生で初めての尿漏れでした。
妊娠してからずっとホルモンバランスが乱れていたため、きっとこれはオリモノだろうと自分に言い聞かせていました。ところが日に日に量や回数が増え、現実を受け止めざるを得ない状況に。
妊娠中は、つわりを筆頭に、頭痛、腰痛、耳鳴り、立ちくらみ、と数えきれないマイナートラブルに苛まれてきましたが、一番ショックを受けたのはこの尿漏れでした。
テレビCMの影響もあり、自分の中で「尿漏れは高齢者の悩み」という先入観が強く、「私は20代なのに」と、とても落ち込みました。あの気持ちを言葉にするならば「自尊心が木っ端みじんになる」、そんな感じです。
妊娠すると骨盤底筋が緩むため尿漏れしやすくなる、という知識だけは知っていましたが、いざ自分の身に起こるとなかなか受け止められないものでした。
結婚を機に退職していたため、家にこもりがちな妊娠生活。悩みが悩みなだけに気軽に相談できる人がいなくて孤独を感じがちでした。
妊婦検診で主治医から「なにか聞きたいことはありますか」と問われても、男性医師を前に尿漏れ対策を聞ける勇気はとてもなく、結局くしゃみや咳をするたびに感じるあの不快感が憂鬱で仕方ありませんでした。
妊娠後期に突入し、少々体重が増えすぎてしまった私は、助産師に勧められてマタニティヨガに通うようになりました。
当初は全く気乗りせず…というのも、この頃になると多少の咳払いでも尿漏れしてしまっていたため、ヨガで身体を動かそうものなら、と想像すると落ち込みました。
しぶしぶ参加した初回レッスンのあと、他のプレママ(妊婦)さんと雑談していると、思いがけずそのうちの一人が「そうそう!先日〇〇さんに言われた通り、ナプキンを尿漏れパッドに変えてみたら全然違う!快適!」と、衝撃の事実を大暴露。
あっけらかんと尿漏れを話題にしているオープンさに目が点になりましたが、それ以上に尿漏れパッドの情報は驚きでした。なぜなら、私も尿漏れ対策のためにナプキンを当てていたからです。
ドラッグストアの店員は全く気にしていないと言われても、レジで尿漏れパッドを購入する勇気が20代の私にはありませんでした。
「ナプキンは経血用にできているから、専用の尿漏れパッドのほうがいいよ」と情報を得て、ヨガレッスンのあとドラッグストアに直行したのは言うまでもありません。通販を使ってでも早く購入すればよかったと思うほど効果の違いは歴然でした。
さらに、レッスンで教わった“下半身の筋トレ”をコツコツと続けました。
お皿洗いや歯磨きのときに、股間からお尻にかけてグッと3秒力を入れる・脱力する、を繰り返しました。身体に負担をかけられない妊娠中なので、筋トレと言ってもささいなことではありますが、何もしないよりは気持ちが楽でした。
結果、体重管理のために通ったマタニティヨガで本来の目的が達成できたかというと怪しいところではありますが、同世代の女性と悩みを共有できたという意味では本当にありがたかったです。
そして2019年秋、3日間に渡る壮絶な陣痛を経て、待望の我が子を出産。
驚くことに、出産した瞬間から、立ち上がっても、座っても、咳をしても、くしゃみをしても、ぱたりと尿漏れが無くなりました。
もしかしたらマタニティヨガで学んだ下半身筋トレが、産後ようやく効果を発揮したのかもしれません。
“本当に妊娠生活が終わったんだ”としみじみ実感したことを覚えています。
そして同時期に出産したママさんの中には、産前はなんともなかったのに産後尿漏れが始まって困っている、と私と逆パターンで悩んでいる方もいました。
使わなくなった尿漏れパッドの余りをお譲りしつつ、妊婦の数だけマイナートラブルがあると身をもって実感した私です。
相談しづらい悩みなだけに気持ちも塞ぎがちだと思いますが、もし同じ悩みを抱えている妊婦さんや新ママさんがいたら、妊娠中や産後は身体の構造的に「仕方ないこと」だと割り切ってしまったほうが少しでも気が晴れると思います。
あえて表立って言わないだけで、思ったよりも尿漏れで悩んでいる20~30代はたくさんいました。
また、私の場合は同世代の人と悩みを共有できただけでも随分と気が楽になりました。
ネットやSNSも上手に使いながら、尿漏れのマイナートラブルに負けずに妊娠生活を楽しんでください。